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ホメオスタシスとは、生体の内部や外部の環境変化に対して、その生体の状態が一定に保たれるという生物の性質や状態のことです。恒常性の維持とも言われています。生物としての恒常性が保たれるためには、環境が変化した時に、生体の状態を元に戻そうとする体内の作用が働いているのです。たとえば、夏に汗をかくのは体温を平熱に保とうとする生体反応です。寒いときに身震いするのも同じ生体反応です。血圧が一定に保たれるのも、傷ができたときにかさぶたができるのも生体反応です。これが恒常性の維持、ホメオスタシスです。
生体におけるホメオスタシスという概念は以前から知られていました。が、不思議な脳機能学者の苫米地英人さんが書いた本によると、脳においてもホメオスタシスが働いているのだそうです。万年スッカンピンの人が宝くじで1億円を当てたとします。さぞかしハッピーだろうと思いきや、いつもお金がない状態に慣れてしまっている本人にとっては決して居心地のいい状態ではないのです。大金をもつのは居心地のよい状態ではないので、脳はその1億円をさっさと使ってしまおうとします。男性ならキャバクラ、女性ならホストクラブに連日通いつめて、毎晩100万円つづ使うかもしれません。あるいは手当たり次第に馬券を買い込むかもしれません。あっと言う間に1億円はなくなってしまいます。ところが本人にとっては、お金がない元の状態に戻れたので居心地がいいのです。もとの慣れた状態に戻ったことに脳が満足しているのです。反対に、いつも貯金通帳に1億円がある人は、それが9千万円になってしまうと貧乏になったような気がして消費を控えます。この人にとっては貯金通帳に1億円あるというのが恒常性であり、ホメオスタシスが働いているというのです。この苫米地氏の説は非常に興味深いものです。いずれにせよ脳にホメオスタシスが働くのなら、貧乏ホメオスタシスより金持ちホメオスタシスのほうがいいではありませんか。生体のホメオスタシスと違って、脳のホメオスタシスは生来のものではなく、生活習慣と知性の結果のはずです。だとするなら金持ちホメオスタシスは可能なはずです。どうせなら良いホメオスタシスが働いたほうがいいでしょう。
アーユルヴェーダにもホメオスタシスに似た考え方があります。サムスカーラです。サムスカーラは記憶や習慣のことです。喫煙は悪いサムスカーラです。夜中にラーメンを食べることも良いサムスカーラとは言えません。幼児期に親から暴力を受けた経験をもつ人はそれがサムスカーラとして記憶に残り、自分の子供にも暴力をふるう確率が高くなります。人間はどうしてもサムスカーラに影響を受けるのです。サムスカーラから逃れられないのなら、ネガティブなサムスカーラよりポジティブなサムスカーラを身につけたほうがいいのは明らかです。子供にときに両親と楽しく過ごしたサムスカーラ、困っている人を助けるサムスカーラ、友達と明るく笑いあうサムスカーラ。こうした良いサムスカーラが脳のなかに根づいているなら、困難な事態に直面したとしても、良いホメオスタシスが働き、良い状態に戻ろうとする力が働くのです。子供のときから良いサムスカーラをつくることが大切だとアーユルヴェーダは言います。だから良い友達をつくることが大切なのです。良い先生にめぐり合うことも大切です。子供に良いサムスカーラを与えてあげるのは親の責務です。アーユルヴェーダは良いサムスカーラをつくるための一つの方法なのです。