「アーユルヴェーダってなにか一言で教えて」と言われると言葉に窮します。「アーユルヴェーダって額に油をたらすやつでしょ」と言われると、それも一部であるけれど、と答えにつまります。アーユルヴェーダは病気を治し、健康な人の健康を維持するためのシステマティックな科学であるけれど、「ココアを飲んだら頭がよくなる」式の手短な健康指南術ではないからです。


アーユルヴェーダはライフスタイルです。イタリアで始まったスローフード運動が生き方を問いかけているのと同じことです。スローフード運動は、これまでのスピードと効率ばかりを優先させた生き方にどれほどの価値があるかを見直す運動です。単なるグルメ追求ではないのです。アーユルヴェーダも同じです。食べ物、スパイス、ハーブ、色、金属、鉱物、音など自然の恵みを活かしながら、心と体の健康と知性を高めるためのシステムなのです。アーユルヴェーダの究極の目的は、素敵に生きていくうえで必要な知識を一人一人にもってもらうことにあります。
私たちは富の獲得競争、スピード重視、効率性優先、成果主義の真っ只中にいます。そうしたなかで人と人とのつながりが消え、自然との関係も失われようとしています。アーユルヴェーダは人間も自然の一部であることを教えてくれます。いまアーユルヴェーダが世界的に注目されているのは、人間も自然の一部であることを見つめなおし、失われつつある自然とのつながりの回復を求めているからです。アーユルヴェーダは自然が惜しみなく与えてくれるものについての知識なのです。自然の恵みである穀物や野菜が体や心にどう影響するか、人間と同じ五大元素から成るハーブやスパイスが体にどう同化するか、深く吸い込んだ新鮮な空気がどう心に反映されるかをアーユルヴェーダは教えてくれます。アーユルヴェーダをとおして自分がだれであり、どこから来て、この宇宙のなかでどういう位置にあるのかを知れば、従来の競争主義とは違う新しい生き方がみえてくるはずです。